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菊間瓦端材を利用した涼感コンクリートブロックの開発

水口公徳 森高準一* 杉尾政和*

平成23年度から菊間瓦工場から排出される規格外品などの瓦端材を主原料とし、涼感のある歩行空間形成に有効なコンクリートブロックの開発に取り組んでいる。
本研究では、昨年度の研究をシーズとし車道用においても使用可能な5.0 N/mm2以上の曲げ強度と、配合設計の見直しによる保水性能が向上した、表面温度上昇抑制効果を持つブロック製品の実用化研究を行った。
キーワード:菊間瓦、瓦端材、保水性、表面温度上昇抑制、じん性

は じ め に

菊間瓦工場から排出される規格外品などの瓦端材は、産業廃棄物として有料で処分されており、製造業者は瓦端材の有効利用を強く求めている。一方、節電対策や夏季のヒートスポット現象を緩和するため、涼感のある歩行空間形成に有効な新材料の開発が望まれている。

kawara 図1 瓦端材

平成23年度のシーズ研究で、保水量0.25 g/cm3及び曲げ強度3.3 N/mm2の値を示すJISA5321保水ブロック(歩道用)の規格値を満足する供試体を制作した。この供試体は、照射ランプを用いた供試体表面温度測定から、比較用のアスファルト混合物と比べ25 ℃の表面温度上昇抑制効果が認められた。
しかし、商品化するためには歩道であっても部分的に車の荷重が載ることから、車道用としても使用できる曲げ強度を有する製品とすることが必要である。
このため、本研究では、
①配合設計の見直しによる保水性能の向上
②車道でも使用可能な5.0 N/mm2以上の曲げ強度を持つブロックの開発を目的とした。
なお、強度補強は、保水性能の品質保持に影響が小さい短繊維の混入による方法等を検討することとした。

実 験 方 法

1.原料

(1)瓦端材
菊間瓦製造工場から入手した瓦端材をジョークラシャーで5mm以下(粒度5~0mm)に粉砕した。
シーズ研究では0.15㎜未満の微粉を除去したものを用いたが、本研究では微粉除去の手間を省くため、微粉を含めたものを使用した。この粉砕物には1.5mm以下細粒分が16%生じ、F.Mは3.17で、表乾密度は2.19、吸水率は13.0%であった。

(2)セメント
シーズ研究では普通セメント(密度3.16)を使用したが、本研究ではより安価な高炉セメント(密度3.04)を使用した。

(3)短繊維
曲げ強度の増進等を期待してコンクリート添加物として実績のあるポリプロピレンを素材とした短繊維を混入した。使用した短繊維は荻原工業株式会社(倉敷市)が製造する繊維長12mmのバルリンク(製品名)を使用した(図2)。

gurass 図2 短繊維(バルリンク)

2.ブロックの製造

(1) ブロックの作成
ブロックはエコマテリアル株式会社の工場において実機を使用して作成した。
材料を強制練ミキサーで攪拌混合し練り混ぜた後、材料をインターロッキングブロック用の型枠に投入した。さらに振動加圧即時脱型方式により成形を行った。

3.品質試験

作成したブロックを用いて次の品質試験を行った。

(1)密度試験
ノギスにより寸法を計測し体積を求めた。また、絶乾質量は供試体を温度105±5℃の乾燥器内において24時間以上乾燥させた後、常温まで冷却したときの質量とした。

(2)保水性試験(JISA5371)

(3)曲げ強度試験(JISA5363)

(4)照射ランプによる供試体表面温度の測定
(社)日本道路協会が規定する路面温度低減値を求めるための照射ランプによる供試体表面温度の測定方法2)に準じて行った。なお、恒温恒湿室は用いず、光源にハロゲンランプを用いた。本研究では、密粒アスファルト混合物が照射3時間後に約60度になるように設定した条件化で供試体表面温度を測定し、60度との差を路面温度低減値(℃)とした。

(5)溶出試験
作成したブロックの環境への負荷を調べるため、溶出試験を行った。試験項目は重金属を対象とし、環境庁告示第46号(平成3年8月23日付け)に規定される土壌の汚染に係る環境基準のシアン化合物及びアルキル水銀化合物を除く第二種特定有害物質(8項目)を実施した。

結 果 と 考 察

1.配合の検討(最適配合の探索)

配合の検討はセメントの種類や水セメント比及び、セメント、水、瓦端材、空気量及び短繊維の割合を変えて供試体を作成した。

(1)短繊維添加が曲げ強度に及ぼす影響

h3 図3 短繊維添加量と曲げ強度の関係     

短繊維の効果を調べるため、短繊維の添加量を変えて曲げ強度試験を行った。図3は短繊維添加量と曲げ強度の関係を示したものである。
この図が示すように短繊維は曲げ強度の増進効果がないことが分かった。なお、この検討から短繊維のじん性効果を確認したが、このことは後述する。

(2)最適配合で制作したブロックの品質
最適配合で制作したブロックの外観を図4に、またこの品質を表1に示す。

seihin1 図4 ブロックの外観写真(100×200×60mm)

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表1 既存製品との比較
h1

h2 図5 照射ランプによる表面温度上昇抑制効果

表1には、昨年度のシーズ研究の成果及び基準値(JISA5371保水性ブロック)を併せて示した。この表から、保水量はシーズ研究と比べ大きな値を得ることができた。一方、曲げ強度についてはシーズ研究の値の1.3倍の値が得られたが、目標とした曲げ強度5.0 N/mm2以上の値は得られなかった。
また、後述する表面温度上昇抑制効果はシーズ研究と同等の値が得られた。

(3)表面温度上昇抑制効果
作成したブロックの表面温度上昇抑制効果を調べるため(社)日本道路協会が規定する方法に準拠した試験を行った。図4にこの試験結果を示した。この図から、作成したブロックの表面温度低減値として24℃が得られた。

(4)じん性効果
インターロッキングブロックのじん性効果に着目した研究や製品はないが、製品の耐久性に資する性能として重要と考えられたので記述した。
本研究では曲げ強度の増進を目的としてポリプロピレン製の短繊維を使用した。
図6に短繊維の有無それぞれの荷重-変位量曲線を示した。

h4 図6 ブロックの荷重-変位量曲線

この図から、短繊維の無い通常のコンクリートブロックは曲げ破壊後ただちに分断破壊を示すが、短繊維を添加したブロックは破壊後分離せずに一定の曲げ強度を保持したまま変位することが分かった。また、短繊維の有無にかかわらず、破壊荷重が同等であることから、短繊維添加による強度に及ぼす影響はないと判断される。
さらに、短繊維を添加したブロックは破壊直後に曲げ破壊荷重の約40%を超える強度を有しており、破壊後分断しないことから製品の耐久性、安全性の観点から有益と考えられた。
図7に短繊維を添加したブロックの破断面を、図8に曲げ試験後の試験体の状況を示す。短繊維が分散し繊維が有効に機能していると考えられる。

(5)環境安全性
溶出試験の結果、重金属8項目の試験値はいずれも環境基準以下であり、制作したブロックは環境に及ぼす影響は小さいと判断される。

hosui 図7 短繊維を添加したブロックの破断面

taikiyu 図8 短繊維添加ブロックの曲げ試験後の試験体

ま と め

本研究は、昨年度のシーズ研究をもとに、短繊維による曲げ強度や配合の見直しによる保水量の増進を目的としたものであるが、研究の初期に短繊維の強度増進効果がないことが分かったため、配合の見直しによる最適配合の探索を中心に研究を進めた。
また、実用化のためいくつかの改善を行った。シーズ研究では0.15㎜未満の微粉を除去したものを用いたが、本研究では微粉除去の手間にかかる経費を省くため、微粉を含めたものを使用した。また、シーズ研究では普通セメントを使用したが、本研究ではより安価な高炉セメントを使用した。
この結果、0.15㎜未満の瓦微粉は保水性の増進に有効であること及び、瓦微粉は強度低下を招かないことが分かった。
また、最適配合を探索した結果、保水量0.28 g/cm3はシーズ研究と比べ大きな値を得ることができた。
一方、曲げ強度についてはシーズ研究の値の1.3倍の値4.4 N/mm2が得られたが、目標とした曲げ強度5.0 N/mm2以上の値は得られなかった。
なお、本研究では初期の強度発現が小さい高炉セメントを使用したが、シーズ研究と同じ普通セメントや安価な混和剤の使用により曲げ強度5.0 N/mm2以上が得られるのでないかと考えられる。
さらに、表面温度上昇抑制効果はシーズ研究と同等の値が得られた。
本研究でブロックに短繊維を添加したことで、新たな機能が確認された。すなわち、じん性という機能で、短繊維を添加したブロックは破壊直後も大きな強度を有しており、破壊後分断しないことが分かった。この機能により、ブロックに破損が生じてもはがれが生じにくく、ブロックの抜け穴が生じないと考えられることから通行者等の安全確保に資すると考えられる。
研究したブロックは、表面温度の上昇抑制効果に優れた保水性ブロックであり、歩道や公園でのインターロッキングブロック製品として用いることで、夏季の節電対策及びヒートスポット現象の緩和に寄与するとともに、涼感のある空間形成に役立つと考えられる。
また、瓦製造工場から排出する端材は、従来から産業廃棄物として処分されてきたが、ブロック用材料として再資源化を図ることが可能になるため、瓦端材の処分費用が削減され、循環型社会の構築に寄与することが期待される。

文    献

1)(社)日本道路協会:舗装調査・試験法便覧, (2007)
2)(社)日本道路協会:

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